月の夜に降る雪

――詞華集 日々の営みの中で さまざまにうつろう 心模様です――
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条件反射

わたしは自然に笑えるようになった。
何かにのめりこんでいないと闇にのみこまれそうだった頃と違って。
心から笑えるようになった。

わたしは新しい目標を見つけられた。
知りたいこと、得たいものに出会えて、スタートを切ったところ。
希望と前向きな気持ちがわく。

わたしは人に近づけるようになった。
笑っていて、よくしゃべって、だけどファイアウォールを立てていた、
あの頃より壁が低くなった。

わたしの人生は再び動き出した。

仕事をしている、何か習っている、少し素直に人に近寄れる。

こうして普通に生きられるようになってからのほうが、
わたしは涙もろくなった。

パブロフの犬の条件反射みたいに。

「妹」と考えただけで。思い出しただけで。
きっかけとなる何かを見たり聞いたりしただけで。

あっという間に涙が出てくる。

あの暗黒の半年には、これほどいつでもどこでも
涙が出てきはしなかったのに。

普通の世界、普通の人生は、
この世界に妹がもういないことを実感させる。

時は動き出したけど、もう二度と会えないことを思い知らされる。

本当に悲しいのか、ただの条件反射なのか、わからないほど、
あっという間に涙が出る。


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失うものはないってことを

朝、目覚めているのに起きられない。

自分がしたかもしれない指し手の誤り、
そのせいで悪くなったかもしれない立場、
見誤っていた人間関係の状況、

ああ、わたしはミスったな、と考えてしまう。

人生も折り返し地点をとうに過ぎたのだから、
今この時点で花形列車のレールに乗っていないなら、
これから先も鈍行のレールしか乗らないだろう。

だから毎朝、呪文を唱えよう。

小さい立場を守るためにあがいた後は特に。

失うものはない。
失うほどのものは何も持ってない。
これで失敗しても、失うものはちっぽけな職位。

この年になって何者でもなく、
何者かになりそうな子供も持たないわたしには、
そのちっぼけな立場は重要だけど、

わたしの頭より高いところから眺めよう。

そうしたら、失うものは何もない。
だって何も持っていないのだから。

さあ、考えずに、
気に入った服を着て、
自己満足して出かけよう。


感情的な夜

夜、ごみを持って外に出る。
明日は燃えるごみの日で、忘れてしまいそうだからと、外に出る。

夜空と建物の壁、地面。

何の変哲もない日曜の夜の景色。

この世のどこにも、もういない。
この場にもいないけど、ここ以外のどこにも、やっぱりいない。

何の変哲もない日常に、突然湧き上がる喪失感。

痛みをどのくらい人に話しますか?

言葉を尽くしても、その人の悲しみはその人にしかわからない。

それがわかっているから、いつまでも悲しんでいないで、
前を向いてけなげに生きているところを見せる。

そうでしょう?

無用な叱咤激励を遠ざけるために。
わかったふりのひとりよがりな鼓舞をかわすために。

今でも突然襲ってくる痛みを、誰にも言えないでしょう?

今までも言われてきたことを、また言われるだけだから。

みんなそうよ、みんな誰かしら喪ってるのよ、あなたはいいほうなのよ。

いつまでもそんなじゃダメよ、私だってあのときはつらかったわ。

あるいは話しても伝わっていないと悟らされる言葉が返ってくる。

それで思い知らされる。
伝わってない、わかってもらえない、受け入れてもらってない。

言わないで、心を閉ざしておいたほうが、楽だから。

誰にも話しません......


お礼

一般基準からしたらほんの小さな、ものすごく小さな、お話にならないような数であっても、
わたしにとっては嬉しさプラス驚きのダウンロードを、ありがとうございました。

本当に、わたしの基準は低くて、5を超えたときに「うわー」と驚きをもって見ましたので、
ダウンロードの貴重なひとつひとつに感謝しています。ありがとうございました。

最後の巻は、校正をしているときもつらくて、今読み返してもまだ涙が出てくるので、
重複ページがあるというミスに気付くのが遅れてしまいました。
早くにダウンロードしてくださった方には申し訳ありませんでした。

ご購入くださった方で、第2版にするには、Amazonへの問い合わせを使うと、新版が配信されるそうです。
また、コンテンツの管理から「自動更新」を設定している場合は、自動的に更新されるそうです(国によってできない場合あり)。

ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。
1つが2回載っているという重複以外に、修正した箇所はありません。

今回、また以前にご購入くださった方、ありがとうございました。

「月の夜に降る雪」

※6/17追記 重複しているページがあったので、修正版をUPしました。Ver.2となっています。

「月の夜に降る雪」シリーズを追加しました。
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よろしくお願いいたします。

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2017年6月12日 17:00 ~ 2017年6月17日 16:59











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再び扉を閉める。

わたしの扉は重くもないけれど。

ただ臆病によって、開く勇気がなくなるだけだけど。

わたしは再び扉を閉める。
たいして重くもない扉だけれど、
恐れを振り払えず、扉に手をかけずにいるだけだけど。

わたしはわたしの扉を閉める。


わたしを傷つけた人たちは

このみつき、わたしを傷つけた人たちは、
みんな優しい人たちで、

優しく受け入れ、優しく包み、
わたしが心を許したら捨てていった。

わたしが今、頼られ支える人たちは、
みんな優しさ求めてて、

わたしは受け入れ、優しく包む。
わたしが心を許した人たちに近いくらいに。

わたしはあの人たちほど優しくないけど、
あの人たちほど弱くもない。

わたしは自分が支えられる範囲しか受け入れない。

最初から、受け入れない。

このみつき、わたしを傷つけた人たちも、
みんなそうしてほしかった。

優しく受け入れ、後から拒む。
優しく包んで、頼ったら拒む。
そんなやり方は一番つらい。

そんなやり方がもっとも残酷。


誰にもそれはある

誰にもやりきれないことはあって、
誰も泣きながら立ち上がって、
いやでもまた歩いていく。

誰にも耐えきれないことはあって、
みんな立てなければ這ってでも、
ずるずるとまた進んでいく。

無題

人なんて結局みんなわたしを傷つける

表面だけの職場の友人のみにしておくのがいい、たぶん

仕事をやめれば終わっていく関係

人なんて親しくなればすれ違っていく

深く知り合わない知人程度の友達だけにするのがいい、きっと

いつでも遠ざかっていけるくらいの絆

人なんてみんなわたしを傷つける


友達の法則

人と仲良くなって、
親しく話すほど合う人で、
そんな人と出会えて幸せだと思ってつきあううち、
やがてまもなく気づく。

やはり最後は分かりあえないんだっていうこと。
最後の二歩くらい手前で、分かりあえなくなるっていうこと。
いや、三歩四歩手前でもうだめだっていうこと。

人と人とは100%は分かりあえない。

50%、60%でつきあうようにすれば、
たくさん友達がいる人になれる。

70%、80%は満足したいなら、
少数精鋭の友人を持てる。

90%を求めるとしたら、
友達のいない人になるだろう。


胸の奥

人を信頼してないって?

本当に悲しいこと、悲しすぎることは、
言えないよ。

誰だってそうでしょう?

人との関係を築けないって?

なんでも言える人なんて、そういない、
いないよ。

誰だってそうでしょう?


あなたたちに責められるいわれはないよ。


後悔

後悔しても仕方ない。
それは分かってた。

誰かを亡くすと後悔する。
それも分かってた。

だから分かってた。
後悔は必ずあるけど、考えても仕方ない。

できるときにできることをして、
あとは後悔があっても仕方ない。

だけど今になって思う。

あの日、ぐずぐず仕事をしていないで、
すぐに帰って病院に行ってあげればよかった。
――それは電車一本二本の違いでしかないけど、
でも一分でも早く行けばよかった。

あの日、これから何日も泊まり込むことになるからと、
一人にして帰ったりしないで、病室にいればよかった。
――それはあのときの判断では当然なのだけど、
でも泊まってあげればよかった。

前の前の週、週末に帰ってあげればよかった。
こんな急にこんなふうになるとは知らず、
それは分かりようがなかったけれど、
でも帰ってあげればよかった。

その前の週末、旅行に行ったとき、
もっとたくさん話せばよかった。

前の月、どうしても予定が空けられなかったけど、
行きたいと言っていた旅行につきあえばよかった。
どんなに非難されても、休みを取ればよかった。


そのとき

同じ頃に同じように家族に病を得た友人は、
痛みや苦しみにあえぐ姉をわたしより早く見送った。

そのときが来てしまったら、なんて言えばいいんだろう。

今は言える。
いろいろなことが言える。

でもそのときが来てしまったら、終わりに向き合う不安に対して、
わたしはなんて言ってあげられるだろう。

そう考えたこともあった。

言えることはないと思った。
そんな恐怖に言える言葉はないと思った。

思いついたのは「今日じゃないよ」という言葉だけ。
「でもそれは今日じゃないよ」「今日じゃないよ」
明日かもしれないけど、でも今日じゃない。

役に立たない言葉しか浮かんでこなかった。

・・・・・・

そのときが来たらあまりに早かった。

数日で逝った。

何も言う暇もなかった。
どれだけ不安だったかも、聞くことがなかった。

それはよかったのか、そうではないのか、
分からない。

逝ってしまったことに変わりはないから、
わたしにとってはどちらでも変わりはない。

そして当人の気持ちはもう分からない。


ひとり

もともと友達は多くなかった。
この五年、少ない友達も切れていった。
あるいは切っていった。

不安に苛まれた五年だったから。

不安の代わりに、悲しみがやってきた。
それは暗闇だけれど、でも終わりでもある。
終わりの次は顔を上げて。

新しいスタートを切るのだから。

人の関係に名前なんてつけられない。
家族でも恋人でもなく、顔見知りより親しいなら、
それは「友達」としか呼びようがない。

どう呼ぶかなんて関係ない。

少しずつ進んでいかなきゃ。
残りかすの人生だけれど、でも少しずつ。
そして「友達」ができた。

切れた。またできかけて、切れた。

近づいてくれる人もいた。
でも求められているものが違う気がした。
わたしが欲しいものと、相手が欲しいものと。

だからつなぐことができなかった。

わたしは向かない。人との関係に向かない。
ゆがんでるようだ。変なふうに。
足りないようだ。何か。

あるいは多すぎるようだ。

わたしは向かない。人との関係に向かない。
喪ったものが大きくて、他の関係をいくつも結んで、
大小たくさんの関係で埋めようとした。

そんなことはできるはずもなかった。

だってわたしだもの。ねじれたわたしだもの。
だって大きかったもの。なくした存在は。
だってわかりあえなかったもの。結局誰とも。

そしてまたひとり。

人は誰でもそうだけど。

またひとり。


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