月の夜に降る雪

――詞華集 日々の営みの中で さまざまにうつろう 心模様です――
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心のひきこもり

もう誰にも二度と心を許さない

この痛手は耐えかねた

もう誰にも二度と心を許さない


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現実

夜の電車の中で、
ふと窓に映る自分を見てはいけない。

年が露骨に出ている顔に、愕然とするから。

本当はそんなに老け込んではいないかもしれない。
人と話しているときは、表情もついているのだから。

でも電車に映る顔は年が出すぎていて、
醜く映る。


2ヶ月

あの子に会わず、話もしない2ヶ月が過ぎた。

そんなことはこれまでもあった。
半年一年会わないような年もあった。
でもこの世界のどこかにはいた。

電話をすれば声を聞けるような気がするけど、
家に行けばそこにいるような気がするけど、
どこにもいない。

あんなに笑ってた子だったのに、
あんなに友達がたくさんいて、
あんなに遊びまわって、旅行も行って、
人に好かれて、みんなの輪の中にいて、
病気や死からあんなにほど遠いところにいたのに。

どうしてこんな子が、こんなに早くに、
この世のどこにもいないなんてことになってるんだろう。

そんな話は世の中のあちこちに転がってて、
特別なことでもなんでもないけれど、
わたしにとってはありえないこと。

もう会えないなんて、
会いたいと思っても会えないなんて、
声を聞けないなんて、
いつか声の記憶も薄れていくなんて、
わたしが年をとっても、
いつまでも写真のままの笑顔だなんて。


人はひとり

誰も助けにはなってくれない。

誰もわたしのすべてを引き受けてはくれない。

依存してはいけない。
依存させてくれる人はいないから。

家族だけが頼らせてくれる。
それでも最後の最後までとは限らない。
最初の最初から頼れない家族もいる。

誰も不安や悲しみをすべてよりかからせてはくれない。

何度も何度も思い知ってきたことのはずなのに、
また思う。

誰もわたしのすべてを引き受けてはくれない。

自分ひとりで越えていかなきゃならない。


お守り

置かれているすべてのお守りの無意味さにかすかな苛立ちを覚える。
何もしてくれなかった、何も変わらなかった――当たり前のことなのに、
お守りなんかで何かがどうにかなるわけないのに、なんとなく許せない。


わたしの人生は終わった

あなたがいないと、この世は違うものになってしまう。
だからまだ行かないでほしかった。

わたしの人生は終わった。

まだ続く命を捨てはしないけど、
だからまだこれから生きていくけど、

ここから先は残りかすの人生。

今は新たに残りかすの人生を始めようとしている。


Funeral

最期のときにその人の人生が評価されるのなら、
大成功の人生だったのだろうと思う。

たくさんの人に悼まれて、
入りきれないほどの人が集まって、
焼香台も急いで増設されて、
返礼も念のための多めの予備まで使い切って、
家にも最後の別れに来る人がひっきりなしだった。

でも誰よりも長く生き残って寂しいお葬式だったとしても、
長く生きたほうがよかったよね――

それほど楽しんだ人生だったんだから、
まだあと同じくらい――
これまで生きてきたのと同じくらいの年月を生きて当然だった。

生きるべき半分しかなかった。

どんなに充実していたって、もうあと同じだけ、生きるべきだったよ。


その事実

ふとした瞬間に、
もうどこにもいないんだ、という事実が
突き刺さってくる。

表示された一覧の中にアドレスを見つけたとき。
昔の楽しそうに笑ってる写真を見たとき。
週末に行くイベントを考えていて、誘う相手として頭に浮かんだとき。
お正月どうしようと思ったとき。
会いに行こうと思ってしまったとき。
話したいことがあったとき。

いろんなとき。


今日は泣いてしまう日

悲しい出来事っていうのは、現実感がなかったりする。
それが日を追っていくと、少しずつ現実だと分かってきたりする。

今日は泣いてしまう日。

もうあの笑顔はどこにもないと悟る。
もうあの声を聞くことはないと思い知る。

喪ってしまったのだと実感する。

今日は泣いてしまう日。


生への希求

どんな最期のときも、
どれほどもうろうとして、どれほど息が苦しくても、

こんな最期の最後までも、命は生きようとする。

生へと手を伸ばそうとする。
手に力が入らなくても。

物を食べようとする。
小さなスプーンさえ持てなくても。

明日のために起き上がろうとする。
ベッドにつながれないために。

どんなに弱っても、もう炎が尽きかけても、
命は必死で生きようとする。

命が燃えつきかけたとき、
命は必死で燃え上がろうとする。

絶望的な努力をやめようとしない。

命は本能的に生への希求を持っている。

あの姿が頭を離れない。


それだけが残されたもの

わたしは書きたいことを書く。

それだけが、わたしに残された慰めだから。

消えないストレスを、考えても仕方ない。
他に心配すべきことは、いくつもある。

分かっていても圧迫されるし、
頭を離れない。
日々、理不尽は起こるから。

だからわたしは、書きたいことを書く。

それだけが、わたしに残された救いだから。


ほんの少し

人生がまだ終わってなかったと知るのはいいことだ。
そこはかとなくいいことだ。

頭のてっべんの避けられない白髪をまめに染めてみたり、
胸の形を整えるブラを買ってみたり、
ダイエットなんかして、顔が痩せたらたるみが現れて嘆いたりする。

もうかなり終わっているのだけれど、まだいいこともある。
それを知るのはいいことだ。

月曜の朝が嫌でなくなる。
仕事帰りにカフェなんて寄ってみたくなる。
人と優しい気持ちでつきあえる。
なんかうきうきしたりする。
足取り軽くなったりする。

もう人生に気負いなんかない。
少し嬉しければ楽しめる。

ほんの少しで気分が上がる。

明日、悲しみが待っているかもしれないとわかっていても、
明日、ひどいことが襲ってくるかもしれないとわかっていても、
ほんの少しで微笑める。

そこはかとなく微笑める。


夏の日の静けさ

静けさが、ひとしずくすべての上に
水のようにひろがるこの夏の日に、
松の眠りのなかに叫びつづける蝉のように



フランシス・ジャムが祈りを捧げる、夏を描いた詩の中で。

フランシス・ジャムの生きた国と、わたしが生きる国では違う。
夏の暑さの度合いも、質も、暮らしも。

それでも同じ静けさがある。

暑さにものみなが息をひそめて物陰に隠れている、そんな静けさ。

蝉の声が響けば響くほど、深まる静けさ。



何一つ変らなかった。あの日のままのすべてを僕は見出した

ヴェルレーヌが書いた。
夏を歌った詩の中で。

このフレーズが、わたしを捕えて放さない。


誰もが何かを抱えてる

誰もが何かを抱えてる。

それがわかると、許せるように思える。
そうか、この人がこうなのは、そういう事情だったのか。

でも誰もが何かを抱えてる。

わかってもやっぱり、許せなくなる。
なるほどたしかに事情はあるかもしれないけど、

でも誰もが何かを抱えてる。
あなただけじゃないのよ、って。


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